種まき農夫のお話(マタイ 13:1-9; ルカ 8:4-8) 1 さて、イエスはというと、湖のほとりで教えていた。もちろん、今日も大きな人だかり。 ――「押すなぁ!」 「もっと詰めてぇな!」 あまりの数にイエスはそこにあった小舟に乗り込んだ。 (ふぅ・・・これで落ち着いて話せる・・・) 小舟の上に腰を下ろしたイエスは、みんなに教えはじめた。群衆は、湖のほとりで興味津々。 2 イエスは、神について多くのなぞかけをした。今日はどんな話を聞けるのかと、集まって来た人たちはワクワクしている。 3 「よし聞くんだ!あるところにいた農夫が、作物の種をまくために出かけた時の話だ! 4 彼が種をまくと、いくつかの種が道ばたに落ちた。するとどうだ!そこに鳥たちがひょいとやって来て、落ちていた種をあっという間に食べ尽くしてしまった! 5 ある種は、岩でゴツゴツした土が足りない地へ落ちた。土が浅くて、すぐに芽を出したは良いが、 6 日が昇るとひからびてしまった!根を深く張れなかったからだ。 7 ある種は、いばらが生い茂る草むらに落ちた。しばらくすると、周りのいばらがすくすく成長した。それは、せっかく育ち始めたいい芽の成長を遅らせ、終いには、実を結ぶことができなかった。 8 だが、よい地に落ちた種はどうだ!グングン成長して、穂をつけた!ある種は30倍、ある種は60倍、そしてある種は100倍もの実を結んだんだ!! 9 聞く耳があるなら、よく聞くんだ!」 なぞかけ(マタイ 13:10-17; ルカ 8:9-10) 10 湖での話しも終わり、群衆と別れると、十二使徒と他の仲間たちがイエスのもとに集まって尋ねた。イエスがしたなぞかけについてだ。 11 「おまえたち以外の人には、なぞかけの心を明かさず、真理を教えるわけか?隠された真理を知る特権はまだ、おまえたちにしかないからだ」 仲間たちの目は輝いた。 12 「聖書のイザヤ書にあるとおりだ・・・ 『彼らは目を凝らして見ようとするが、見えない。 何度も聞こうとはするが、理解ができない。 もし理解すれば、必ず私のもとにかえってくる。 さすれば、私は喜んで彼らを赦そう』」 種まき農夫のお話―その心は?(マタイ 13:18-23; ルカ 8:11-15) 13 目が点になっている仲間を見てイエスは察した。 「・・・もしかしておまえたち!この物語の意味が分からないのか・・・?おいおい、なら他にした話だってさっぱりってことじゃあねぇか! 14 あのな、“種まき農夫”のなぞかけで話した農夫は、神の真理を種まきのように広める人のことだ。 15 いいか、たまに道ばたにこぼれる種がある。これは神の真理を聞いても、すぐに悪魔がやってくると、いとも簡単に植えられた真理を奪われ、忘れてしまう人のことだ。 16 ある人は、岩でゴツゴツしている地へ落ちてしまった種のように、神の教えを聞いて、すぐに、しかも喜んで受け入れはするんだが、 17 心に深く根付かせようとしない。こんな人は長続きしない。受け入れた真理が理由で自分の身になにか問題が起こると、やすやすとしっぽを巻く。 18 ある人たちは、いばらが生い茂る草むらに落ちた種のように、神の真理を聞いたとしても、 19 他のことで頭がいっぱいになる。将来への不安や金銭欲、また、その他に対する欲求不満。これらによって真理を吸収するのが遅れ、良い実を結べなくなる。 20 それ以外は、よい地にまかれた種のようになる!神の真理を聞くと、しっかり飲み込む。その人は、目を見張るように成長し、良い実をどんどん結ぶ!ある人は30倍、ある人は60倍、ある人は100倍だ!!!」 ベッドの下に隠されたランプ(ルカ 8:16-18) 21 「ランプに火を灯し、器やベッドの下に隠したりする人がいるか?まずないな!周りを照らすためのもんだからな。 22 同じように隠されたものは、明らかになり、すべての秘密事が明かにされる! 23 聞こえるなら、しっかり聞け! 24 俺から聞いたことをしっかり飲み込むんだ。神はおまえたちが今、『どれほどの理解があるか』に合わせて、『どれほど与えるか』を定める。だが実際、必要以上に与えてくれるのが神だ! 25 ある程度の理解さえあれば、更にもらえるが、分からず屋は少ない手持ちさえ失う」 種の成長26 「神の王国は畑に種を植える男のようだ。 27 なぜ、どのようにして成長したかなどさっぱりな農夫をよそに、種は昼も夜も成長する。農夫が寝ていようが、起きていようがだ。 28 畑は、人の助けがなくても穂を実らせる。種は苗になって、穂をつけ、穂の中には多くの実がなる。 29 穂が実をつけたとき、人はその実を刈り取る。これぞ、『収穫の時だ』!」 神の王国 の例え―からし種―(マタイ 13:31-32, 34-35; ルカ 13:18-19) 30 イエスは続けた―― 「何と比べれば神の王国を表せる・・・例えるならそうだな・・・」 31 と言って少しすると、にやっとした。 「神の王国は、からし種のようじゃないか!植えられる種の中でも断トツに小さい。 32 でも、植えたらどうなる・・・?庭のどんな植木よりも、大きな木へと成長する!鳥たちが木陰に巣を作れるほど太い枝木を生やす!」 33 イエスは他にも多くのなぞかけを使って、みんなが理解できるだけのことを教えた。 34 集まる人には、決まってなぞかけをしたが、その心までは教えなかった。しかし、イエスの一味だけになると打ち明けたのだった。 おやすみ嵐(マタイ 8:23-27; ルカ 8:22-25) 35 その日の夜だった―― 「行くぞッ!次は湖の向こう岸だ!」 イエスがこう言うと、 36 仲間たちは集まっていた群衆を残し、舟に乗り込んだ。 お、来たか!イエスはすでに小舟の後ろに座って待っていた。辺りには他にもいくつかの小舟が並んでいる。うし、出航だッ! 37 しばらくしてからのことだ―― ビュ――――・・・・・・ 「風が強くなってきたな・・・」 「あぁ、これは荒れるぞ・・・」 風はみるみるうちに強くなり、波が高くなった・・・。 バッシャ――ンッ!!!ザッブゥ――ン!!! 湖がひどく荒れ狂いだした! 「ウ、ウワァ〰!沈没するぞぉ〰〰〰〰!!!」 波が勢いよく小舟を叩きつける。あっという間に小舟は水びたしになり、沈みかけた。 38 この非常事態の中、イエスはというと・・・ん?ね、寝ている???しかも、頭をまくらにうずめて鼻ちょうちんをふくらませて熟睡中。 (・・・こ、こんな時に!!!)慌てふためきながらイエスを起こす仲間たち。 「イ、イエズ――ッ!なに寝てんだッ!!!俺たちがどうなってもいいのか?このままじゃあみんな死んじまいまずッ!!!」 39 イエスはスッと立ち上がると、小舟の外を見た・・・ 「黙って静まれ」 す、すると・・・イエスの言葉に反応して突然嵐が止んだ!!! 40 イエスはすかさず、仲間たちの方に振り返った。 「おまえたちは、なにを恐れてやがる?まだ信じないのか?」 ・・・・・・仲間たちの頭は真っ白で、少しの間ぼーっと立ちすくんでいた。 41 「こ、この方は・・・い゛、いっでぇ何者なんだ・・・?服従しているぞッ・・・か、風や水までがよぉ・・・!!!」 仲間たちは、恐ろしさのあまり互いに問うたのであった。 |
© 2017 Bible League International
Bible League International