しかしナオミは、首を横に振るばかりです。「いいえ、いけません。お里へ帰ったほうが幸せですよ。もう私にはあなたたちの夫になれるような息子がいないのですから〔当時、夫に先立たれた嫁は、亡き夫の弟と結婚する決まりがあった〕。
打つ手がなくなったので、ユダは嫁のタマルに、しばらく実家へ帰ることを勧めました。末息子のシェラが結婚できる年齢になったら必ず呼び戻す、という条件で、ひとまず両親のもとへ帰したのです。しかし、それは表向きで、ほんとうはシェラと結婚させる気はありませんでした。この子まで、二人の兄と同じように、神に殺されてはたまりません。タマルは、言われたとおり両親のもとへ帰りました。
しかしオナンは、自分の子として育てられないような子どもなら、いらないと思いました。それで、結婚はしましたが、いっしょに寝る時はいつも、子どもができないようにベッドの上に射精していました。兄の子孫になる子どもを産ませたくなかったのです。
息子がないまま死んだ人の妻は、夫に兄弟がいる場合はほかの者と再婚はできません。必ず夫の兄弟と結婚するのです。
「お母様、そんなことおっしゃらないで。お願いですから、お母様といっしょに行かせてください。」
さあ、里へお帰り。私は今さら再婚できる年でもないし、かりに再婚して、今夜にでも身ごもって息子を産んだとしても、
