「どうしてだ。あの男がいったいどんな悪事を働いたというのか。」ピラトがむきになって尋ねても、人々は、「十字架だ! 十字架につけろ!」と叫び続けるばかりでした。
悪者は心の中で悪いことを企み、 口をすぼめてうかがっています。
「では、キリストと呼ばれるあのイエスは、どうするのだ。」「十字架につけろ!」
どうにも手のつけようがありません。暴動になるおそれさえ出てきました。あきらめたピラトは、水を入れた鉢を持って来させ、群衆の面前で手を洗い、「この正しい人の血について、私には何の責任もない。責任は全部おまえたちが負いなさい」と言いました。
ピラトは祭司長や群衆のほうを向き、「この男には何の罪もないではないか」と言いました。
そして、罰せられる正当な理由は何一つなかったのに、どうしても死刑にするようピラトに要求したのです。
叫び声はますます大きくなり、人々はパウロを両方から奪い合おうとします。パウロが引き裂かれるのではないかと心配になった司令官は、兵士たちに、力ずくでパウロを人々から引き離させ、兵営に連れ帰りました。
しかし、そのとき人々は耳をおおい、割れんばかりの大声をあげ、ステパノ目がけて殺到したので、彼の声はほとんど聞き取れないほどでした。